障害福祉事業を開始するには、都道府県や政令市から「指定事業者」として認可を受ける必要があります。この「指定」を受けるためには、いくつかの共通要件を満たす必要があります。指定取得のための要件を以下の4つの観点から解説します。
法人格
障害福祉事業の指定を受けるためには、申請する事業者が法人格を有していることが基本要件です。個人事業では指定を受けることができないため(ただし、療養介護を除く)、法人を設立する必要があります。一般的には、以下の法人形態が多く利用されています。
【社会福祉法人】
社会福祉事業を主とした法人で、福祉事業を行うための基盤が整っていると評価されやすく、税制上の優遇措置があります。
【NPO法人(特定非営利活動法人)】
障害福祉サービスの提供を目的に、非営利で活動する法人として適している。
【株式会社や合同会社】
営利法人でも指定は可能ですが、非営利活動の要素が重視される福祉分野においては、非営利性をどのように確保するかがポイントとなります。
法人格を取得するためには、定款の作成や法務局での登記が必要です。また、法人設立後、定款には障害福祉事業を行う旨の記載が必要となるため、事業目的に合った内容を記載することが重要です。
人(人的要件)
次に重要なのが、障害福祉サービスを提供するために必要な「人的要件」です。これは、事業所ごとに配置が求められる職員や管理者の資格、人数に関する要件です。
【管理者】
全体の運営管理を担う責任者で、資格はありませんが、多くの自治体では、管理者に福祉や介護に関する実務経験が求められます。例えば、生活介護事業では、介護や福祉に関する3年以上の実務経験が必要とされることがあります。具体的な要件は各都道府県ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
【サービス提供責任者(通称「サビ管」)】
サービスの質を担保するために必要な役職で、利用者の支援計画の作成や職員への指導を行うなどトータルサポートを行う職種で、障害福祉事業のキーマンとなる職種です。障害福祉サービスを提供している事業所の配置が義務付けられており、サービス提供するうえで全体管理を行います。定められた実務経験を積み「サービス管理責任者等研修」を受けることが必要となります。
【介護職員や支援員】
直接的に利用者に対して支援を行う職員で、事業ごとに人数が定められています。例えば、グループホームであれば、夜間にも対応できる職員の配置が求められるなど、サービス内容に応じた配置基準があります。
人的要件を満たしていないと、指定が下りないばかりか、サービスの質の低下にもつながるため、適切な職員の確保が必要です。
物件
障害福祉事業を行うための「物件」についても、基準を満たす必要があります。これは、サービス提供を行う場所や施設が法令で定められた基準に適合していることを意味します。
【施設の面積や設備】
事業所の種類によって必要な面積や設備が定められています。例えば、生活介護の施設では、利用者一人あたりの居住スペースが確保されていることや、バリアフリー構造(例:手すりの設置、段差の解消など)が求められます。
【安全対策】
火災報知器や避難経路の設置、耐震基準を満たすことが必須です。利用者の安全を確保するため、設備や建物の安全性を証明する書類も提出が必要になる場合があります。
【施設の所在地】
事業を展開する地域によっては、周辺住民への説明や同意が求められることもあります。特に、グループホームなどの場合、地域との共生を前提とした運営が重視されます。
これらの要件を満たす物件を準備することで、指定取得に向けたハードルをクリアすることができます。
その他
上記のほかにも、障害福祉事業の指定を受けるためにはいくつかの共通要件があります。
【事業計画書の提出時】
福祉サービスをどのように提供していくのかを明確に記載した事業計画書が求められます。計画書には、利用者の募集方法、サービス提供の流れ、初年度の収支予測、利用者数の見込みなどが含まれます。
【資金の確保】
事業を安定的に運営するための資金力も確認されます。特に、運転資金や開業資金の確保が求められるため、財務基盤がしっかりしていることが審査のポイントとなります。
【コンプライアンス体制の整備】
利用者の個人情報保護や労働環境の整備といった法令遵守の体制が整っていることも求められます。これには、職員研修の実施や内部監査の体制などが含まれます。
【自治体ごとの要件確認の重要性】
申請の際には、指定を受ける都道府県や市区町村によって異なる要件があることを理解することが重要です。特に、管理者の実務経験年数や物件の配置基準は自治体ごとに異なるため、事前に各自治体の福祉課で確認することをお勧めします。
まとめ
障害福祉事業における「指定」を取得するためには、法人格を持ち、必要な人員を配置し、適切な物件を準備することが基本となります。また、事業計画や資金面の準備も重要です。これらの要件をしっかりと理解し、準備を整えることで、利用者に安心してサービスを提供できる事業運営が可能になります。