第2期ひょうご障害者福祉計画≪第3章:各分野における取組≫(3/3)

障害福祉

「ひと」分野

兵庫県では、「共生社会」の実現を目指して、特別支援教育の充実や障害福祉分野における包括的な支援体制の整備を進めています。この取り組みは、平成31年に策定された「兵庫県特別支援教育第三次推進計画」に基づいて行われており、障害のある人々が持てる力を最大限発揮し、自由な社会の中で効果的に参加できる環境づくりを目指しています。

教育分野では、障害のある子どもとない子どもがともに学ぶ環境を整備し、特に障害のある子どもの自立や社会参加を支える多様で柔軟な仕組みづくりが重要視されています。具体的には、就学前から大学や就職に至るまでの切れ目のない支援を確立するため、教育の連続性を確保し、合理的配慮を提供する体制を強化しています。また、ICTを活用した指導の推進や、地域社会との交流学習の充実を図ることで、子どもたちが社会的なスキルや自立性を高められる環境を提供しています。

一方、障害福祉分野では、障害者支援事業所における職員の処遇改善を目的に、処遇改善加算の取得支援やICT導入を促進しています。また、強度行動障害を持つ人々への支援者の養成や、特別支援学校と地域社会の連携による相互理解の促進も推進されています。これに加え、多職種連携を強化することで、医療・福祉・教育分野の間での切れ目のない支援を提供できる体制の構築が進められています。

さらに、相談支援体制の充実にも注力しています。具体的には、総合相談窓口の設置や基幹相談支援センターを核としたネットワークの構築、専門機関や相談員による支援体制の強化などが挙げられます。また、認知症やひきこもり、不登校、女性の自殺リスクといった特定の課題に対しては、専門的な相談窓口や研修を通じた支援を行っています。 これらの取り組みを通じ、兵庫県は、障害のある人もない人もお互いを尊重し合いながら、ともに支え合い成長できる社会の実現を目指しています。共生社会の実現は、単なる理念ではなく、実際の政策や取り組みを通じて具体化されており、県民一人ひとりが安心して生活できる環境づくりが進められています。特に、コロナ禍以降の新たな社会課題に対応するための施策にも積極的に取り組み、地域社会全体での包括的な支援体制を整えることに力を入れています。

「参加」分野

まず、障害のある人々の就労支援については、一般就労の促進と福祉的就労の充実が挙げられています。一般就労では、障害者特性に応じた職業訓練や就労体験を提供し、職場定着を図るための支援が行われます。また、中小企業での雇用拡大を支援するほか、成功事例を広く発信し、労働条件や待遇の向上にも取り組みます。一方、福祉的就労においては、授産商品の販売促進や農業分野での障害者雇用推進、さらには作業環境の改善を通じて、障害者が働きやすい環境を整える施策が進められています。

次に、文化・スポーツ活動の推進として、障害者が文化芸術活動やスポーツに参加できる機会を増やす取り組みが進められています。バリアフリー環境の整備や、障害の有無に関係なく共に作品を発表できる場の創出を通じて、社会参加の幅を広げています。

さらに、障害福祉サービスの充実にも力が注がれています。居宅介護や移動支援などの日常生活を支える多様なサービスを強化するとともに、地域間のサービス格差を解消するための取り組みが行われています。特に、重度障害者や医療的ケアが必要な人々に特化したサービスの提供が重要視されています。

また、権利擁護と差別解消の観点から、意思決定を支援する仕組みや虐待防止のネットワーク構築が進められています。改正差別解消法への対応を推進し、障害特性を理解した支援を行うことで、障害のある人々が公平に社会参加できる環境を目指しています。

最後に、ユニバーサルツーリズムの推進では、障害者や高齢者が旅行を楽しめるよう、宿泊施設のバリアフリー化や観光地の情報提供を充実させる取り組みが行われています。

これらの政策や取り組みは、障害のある人々が社会で活躍し、生きがいを持って生活できる環境を構築することを目的としています。

「情報」分野

近年の情報通信技術(ICT)の進化は、障害者福祉分野において多大な可能性をもたらしています。特に、意思疎通や情報取得といった「情報」分野では、これまでの課題を大きく改善する技術革新が進んでいます。これに加えて、福祉人材の確保や、多様化する働き方への対応を目指した障害福祉サービス事業所での生産性向上も、ICT活用の大きな目的の一つです。また、「ひと」「参加」「まち・もの」など、幅広い分野において、ICTが障害者の生活や社会参加を支えるツールとして期待されています。

これらの技術革新に対応するためには、新しい技術やサービスに対して積極的な姿勢が求められます。新たに開発される技術が従来の枠を超えるものであっても、行政や福祉サービス提供者がそれを敬遠するのではなく、失敗を恐れずに挑戦し、障害特性に応じて有効に活用することが重要です。特に、行政が自前主義に陥ることなく、民間企業が提供する技術やサービスを積極的に取り入れることで、ICTの利点を最大限に生かすことが求められています。

現在進められている施策としては、以下のような具体例が挙げられます

  • 1.自然災害や緊急時に家庭と連絡を取るためのICT体制の整備
  • 2.障害福祉サービス事業所におけるICTやロボットの導入支援による生産性の向上
  • 3.eスポーツを活用した、重度障害者の社会参加を促進する新しい競技の検討
  • 4.ひきこもり状態の人やその家族に向けた、オンライン会議アプリを活用した居場所の提供と相談支援
  • 5.障害者手帳情報をマイナンバーカードやスマートフォンアプリで活用するための関係機関との協議
  • 6.パソコンやスマートフォンを使えない在宅障害者に向けた、デジタルデバイドの解消
  • 7.視覚障害や聴覚障害など、障害特性に配慮した情報提供手段や意思疎通の充実
  • 8.県庁窓口や県立施設における音声認識アプリの積極的活用
  • 9.県立リハビリテーション中央病院との連携によるロボットリハビリテーションの推進
  • 10.福祉のまちづくり研究所による、リハビリ支援機器、住環境、移動支援、福祉用具の研究開発

これらの施策は、現代的な課題に対応するために必要不可欠なものであり、2026年を目標としたものから、今後さらに検討を深めるべきもの、ポストコロナ社会に向けたもの、新たに実施すべきものまで、さまざまな時間軸で計画されています。

ICTの導入は、障害者一人ひとりの生活の質を向上させるだけでなく、地域社会全体の福祉水準の向上に直結すると考えられます。これらの取り組みを通じて、障害者がより自立した生活を営み、社会の一員として積極的に参加できる環境が整備されることが期待されています。

今後も、技術の進化とともに新たな課題や可能性が生じることは避けられません。しかし、それに対して柔軟かつ積極的に取り組む姿勢が、持続可能な福祉社会の実現につながると言えるでしょう。

「まち・もの」分野

1. 施設サービスの充実
障害者が安全で快適な生活を送るため、施設環境の整備やサービス向上に注力しています。重症心身障害児・者や障害のある子どものための入所施設の環境改善、不適切な身体拘束の廃止、障害福祉サービス従事者に対する権利擁護や虐待防止の啓発が含まれています。また、高齢化や障害の重度化に対応する施設整備、運営費補助、自立支援給付費の適切な配分など、施設を利用する障害者の多様なニーズに応える施策が具体的に記載されています。

2. 保健・医療体制の充実
障害者が適切な医療やリハビリを受けられる体制を整えるため、多角的なアプローチが取られています。県立リハビリテーションセンターの運営や、ロボットリハビリテーションの導入、療法士研修の実施など、医療技術や専門性の向上に取り組んでいます。また、自立支援医療費の適正な給付、障害特性に対応可能な医療従事者の育成、精神科医療の適正化、総合的な依存症対策の推進、新型コロナウイルス感染症に対応したこころのケア支援など、多岐にわたる医療支援が含まれています。さらに、難病患者への保健指導や医療費助成、地域のてんかん診療ネットワークの整備なども計画されています。

3. 地域とまちづくりへの配慮
障害のある人々が地域で安心して暮らし、社会活動を行うために、まちづくりと環境整備に配慮した取り組みが進められています。ユニバーサルデザインを推進し、公共交通機関や県立施設のバリアフリー化、福祉施設の耐震化、公営住宅のバリアフリー化などが重要視されています。防災・防犯対策では、避難行動要支援者のための個別避難計画の作成、災害時における福祉施設のインフラ確保、非常用発電設備の導入、災害派遣福祉チームの整備が進められています。また、障害特性に応じた福祉避難所の確保、災害時の障害者施設支援ネットワークの整備、特殊詐欺被害の防止啓発といった多角的な施策が含まれています。

これらの取り組みは、障害者が地域社会で自立しつつ、安心して暮らせる環境を整えることを目指しており、障害者支援をより効果的で包括的なものとするための道筋を示しています。特に、施設整備、医療支援、地域社会との連携を通じた防災・防犯対策の推進に焦点が当てられており、多様な課題に対応する具体的な方法が明確に述べられています。このような取り組みを継続・強化することで、障害者を取り巻く環境がさらに改善され、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指しています。