開業医の新たな経営課題「医療DX」が浮上──開業医白書2025から読み解く医療現場の最新動向と行政書士の視点

医療に関する許認可

はじめに:開業医を取り巻く環境の変化

開業医の皆さま、こんにちは。行政書士として、医療機関の開業支援、医療法人設立、各種許認可申請のサポートをさせていただいております。

近年、医療業界では医師の働き方改革や医療DXの推進など、大きな制度変化が続いています。そして、医師の働き方改革、2026年4月からの外来医療計画や医師偏在対策など、開業環境に影響を与える制度の見直し、そして国が推進する医療DXの流れの中で──。開業医の先生方にとって、経営環境はますます複雑化しています。

そんな中、全国523人の開業医を対象とした「開業医白書2025」が株式会社ギミックから発表されました。この調査は、開業医が直面するリアルな課題を定量的・定性的に明らかにした貴重なデータです。

本記事では、行政書士として医療機関の開業・運営をサポートする立場から、この調査結果を深掘りし、開業医の先生方が今後どのような視点で経営戦略を考えるべきかを解説します。


開業医の最大の悩みは「スタッフ採用」──3年連続1位の背景

スタッフ採用が最重要課題となる理由

「開業医白書2025」によると、開業医の54.5%が「スタッフ採用」を課題と回答し、3年連続で最多の悩みとなりました。

この背景には、少子高齢化による労働人口の減少、医療業界全体での人材不足、そして働き方改革による勤務条件の厳格化があります。特に看護師、医療事務スタッフの確保は年々困難になっており、応募者が集まらない、すぐに離職してしまうといった悩みが深刻化しています。

採用手法の多様化と世代間ギャップ

調査では、採用方法の変化も明らかになりました。従来はハローワークが主流でしたが、40代以下の開業医ではハローワーク利用率が50%を下回り、代わりに「自院のホームページ」「求人検索エンジン」の活用が増えています。

若い世代の開業医ほど、採用を「募集」から「情報発信」へと転換し、クリニックの理念や働きやすさをアピールする戦略的なアプローチを取っています。

採用プロセスの実態──書類選考を省略するクリニックも

興味深いのは、約3割のクリニックが「履歴書の事前提出」を求めず、書類選考を行っていない点です。応募者不足が深刻な中、まずは面接で人柄や雰囲気を確認したいという開業医の意向が反映されています。

一方で、「院内見学の機会」を設けているクリニックは20.3%にとどまり、応募者とのミスマッチを防ぐための工夫は、まだ十分に広がっていないのが現状です。

行政書士の視点から見ても、スタッフの定着率向上は経営安定の要です。就業規則の整備、労働条件の明確化、職場環境の改善といった「制度面」からのサポートも、今後ますます重要になるでしょう。


新たな課題「医療DX」が浮上──25.4%の開業医が悩みを抱える

医療DXとは何か?

今回の調査で最も注目すべきは、新設された「医療DX」という項目です。実に25.4%の開業医が医療DXを課題として挙げており、「集患・増患」「経営戦略・事業運営」に次ぐ第3位の悩みとなりました。

医療DXとは、デジタル技術を活用して医療サービスの質を向上させ、業務効率化を図る取り組みです。具体的には、以下のような施策が含まれます。

  • オンライン資格確認システムの導入
  • 電子処方箋への対応
  • マイナンバーカードを活用した医療情報連携
  • 電子カルテの導入・高度化
  • オンライン診療の実施

医療DXがもたらす現場の負担

国が推進する医療DXは、患者の利便性向上や医療の効率化を目指すものですが、現場では以下のような負担が発生しています。

1. 導入コストの負担
システム導入には初期費用が必要で、特に小規模クリニックにとっては経営を圧迫する要因となります。

2. スタッフ教育の必要性
新しいシステムを使いこなすには、スタッフへの教育が不可欠です。しかし、日常業務と並行して研修を行うのは容易ではありません。

3. 患者への説明負担
マイナンバーカードの利用やオンライン資格確認について、高齢の患者さんに理解してもらうのは簡単ではありません。窓口での説明に時間がかかり、業務負担が増加しています。

4. 世代間のITリテラシー格差
調査では、高齢層の開業医ほど医療DXへの苦手意識が強いことが明らかになりました。「何から始めればいいのかわからない」という不安が、導入を遅らせる要因となっています。

行政書士が果たすべき役割

医療DXの推進に伴い、行政手続きも変化しています。例えば、オンライン診療を開始する際には厚生局への届出が必要ですし、電子カルテの導入に際しては個人情報保護法への対応も求められます。

行政書士は、こうした新しい手続きの代行や相談対応を通じて、開業医の先生方が本来の診療に集中できる環境を整えるサポートをしています。


医療連携の実態──理想と現実のギャップ

病診連携:「非常に連携が取れている」はわずか2割

地域医療において、病院と診療所の連携(病診連携)は不可欠です。調査では、約7割の開業医が「連携が取れている」と回答しましたが、「非常に連携が取れている」と答えたのはわずか2割でした。

理想的な病診連携を実現するには、単なる紹介・逆紹介の仕組みだけでなく、医師同士の「顔の見える関係」が重要です。調査では、勉強会や交流会に積極的に参加する開業医ほど、連携がうまくいっている傾向が見られました。

一方で、「時間不足」「逆紹介への不満」といった課題も挙げられており、連携を深めるためのコミュニケーション強化が求められています。

診診連携:連携が取れているのは半数以下

クリニック同士の連携(診診連携)は、さらに厳しい状況です。「連携が取れている」と答えたのは46.6%で、「非常に連携が取れている」のはわずか8.0%でした。

診診連携が進みにくい背景には、以下の要因があります。

  • 診療科や専門分野が異なるため、連携の必要性を感じにくい
  • 同じ地域で患者を取り合う「ライバル関係」にある
  • 医師会活動への参加率が低下し、交流の機会が減少している

しかし、高齢化が進む中で、在宅医療や地域包括ケアの重要性は増しています。診診連携の強化は、今後の地域医療の鍵となるでしょう。

介護施設との連携:最も遅れている領域

医療と介護の連携は、調査結果で最も課題が多い領域でした。「ある程度以上に連携が取れている」と答えたのはわずか35.9%です。

連携が進まない理由として、「交流の機会がない」「連携方法がわからない」といった声が多く寄せられています。特に内科以外の診療科では、介護施設との接点が少なく、連携の必要性を感じていないケースもあります。

しかし、2025年問題(団塊の世代が後期高齢者となる)を控え、医療と介護の連携はますます重要になります。地域包括ケアシステムの中で、開業医が果たすべき役割は大きいと言えるでしょう。


行政書士として開業医をサポートするために

許認可申請から経営支援まで

行政書士は、医療機関の開業や運営において、さまざまな場面でサポートを提供しています。就業規則や労務管理については、社会保険労務士など専門家との連携も重要になります。

開業時のサポート

  • 診療所開設届の作成・提出
  • 保険医療機関指定申請
  • 医療法人設立の手続き

運営時のサポート

  • 定款変更、役員変更の届出
  • 分院開設や移転に伴う手続き
  • 医療DX関連の各種届出

労務・スタッフ管理のサポート

  • 就業規則の作成
  • 労働条件通知書の整備
  • 労働基準監督署への届出

これからの開業医に求められること

「開業医白書2025」が示すように、開業医を取り巻く環境は複雑化しています。スタッフ採用、医療DX、地域連携──どれも一朝一夕には解決できない課題ばかりです。

しかし、これらの課題に正面から向き合い、一つひとつ対応していくことが、持続可能なクリニック経営につながります。

私たち行政書士は、法律や制度の専門家として、先生方の経営をサポートする「伴走者」でありたいと考えています。手続きの代行だけでなく、制度の変化をいち早くキャッチし、先生方にわかりやすくお伝えすることも、私たちの大切な役割です。


まとめ:地域医療の未来を一緒に考える

「開業医白書2025」は、現場のリアルな声を反映した貴重なデータです。スタッフ採用、医療DX、医療連携──これらの課題は、どれも開業医の先生方だけで解決できるものではありません。

行政の支援、地域社会の理解、そして私たち専門家のサポートが必要です。

もし、医療法人設立や各種手続きでお困りのことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。先生方が本来の診療に集中できるよう、全力でサポートいたします。

地域医療の未来を、一緒に考えていきましょう。


参考資料
「開業医白書2025」株式会社ギミック
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000134.000010559.html