はじめに:あなたの実家、相続後どうしますか?
「親が亡くなって実家を相続したけれど、誰も住む予定がない…」
「とりあえず空き家のままにしているけれど、このままで大丈夫?」
もしあなたがそんな不安を抱えているなら、この記事を最後までお読みください。
2025年、日本は「大相続時代」に突入しました。団塊世代約800万人が全員75歳を超え、相続件数が急増しています。それに伴い、深刻化しているのが「空き家問題」です。
実は、空き家の約55%が「相続」によって発生しているのをご存知でしょうか?
本記事では、行政書士として数多くの相続手続きをサポートしてきた経験から、空き家問題の実態と具体的な対策方法について、わかりやすく解説します。
2025年問題とは?大相続時代の到来
団塊世代が全員75歳を超える
2025年は、1947年から1949年に生まれた「団塊世代」約800万人が全員75歳以上の後期高齢者となった年です。
この変化により、日本は以下のような「2025年問題」に直面しています:
- 医療・介護需要の急増
- 社会保障費の増大
- 労働力人口の減少
- 中小企業の後継者不足
- 相続件数の急増(大相続時代)
相続件数が過去最多に
内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、高齢者人口の増加に伴い、年間死亡者数も増加傾向にあり、それに伴って相続件数も急増しています。
相続税の課税対象も拡大しており、内閣府の統計によると、2024年には死亡者の約10%が相続税の課税対象となっています。
「空き家相続」が社会問題に
相続件数の増加とともに、深刻化しているのが「空き家問題」です。
特に、親が住んでいた実家を相続する「実家相続」や、親族から相続した住宅が空き家になる「空き家相続」が急増しています。
空き家の半数以上が「相続」で発生している
国土交通省のデータが示す現実
令和元年に国土交通省が実施した「空き家所有者実態調査」によると、空き家の取得理由として最も多いのが「相続」で、全体の54.6%を占めています。
つまり、空き家問題の本質は「相続問題」なのです。
なぜ相続で空き家が増えるのか?
相続で空き家が増える主な理由は以下の通りです:
① 子どもが別の場所に家を持っている
既に自分の家を持っているため、実家に住む必要がない。
② 遠方に住んでいて管理が難しい
仕事や家庭の事情で、実家から離れた場所に住んでいる。
③ 思い出があって処分できない
親の思い出が詰まった家を手放すことに抵抗がある。
④売却や活用の方法がわからない
何から手をつければいいのかわからず、結局放置してしまう。
空き家を放置すると起こる恐ろしいリスク
空き家を「とりあえず放置」するのは、実は非常に危険です。
リスク① 固定資産税が最大6倍に!
現在、家が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大6分の1まで減額されています。
しかし、空き家を適切に管理せず放置した結果、「特定空き家」または「管理不全空き家」に指定されると、この特例が適用されなくなります。
つまり、住宅用地特例が外れると、固定資産税が現在の6倍に跳ね上がる可能性があるのです。
特定空き家とは?
国土交通省は、以下のような状態の空き家を「特定空き家」と定義しています:
- 倒壊等の危険がある状態
- 衛生上有害となるおそれがある状態(悪臭、害虫の発生など)
- 著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境に悪影響を及ぼしている状態
管理不全空き家とは?
2023年の法改正により、「管理不全空き家」という新しい概念が加わりました。
これは、「このまま放っておけば特定空き家になってしまう」と認められる空き家のことです。
つまり、特定空き家になる前の段階でも、行政から指導を受ける可能性があるということです。
リスク② 段階的な行政指導と罰則
特定空き家・管理不全空き家に指定されると、以下のような段階的な対応が行われます:
ステップ1:助言・指導
自治体から改善を求める通知が届きます。この段階で対応すれば、罰則はありません。
ステップ2:勧告
改善が見られない場合、勧告が行われます。この時点で住宅用地の特例が外され、固定資産税が6倍になります。
ステップ3:命令
勧告にも従わない場合、命令が下されます。命令に従わないと、50万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。
ステップ4:行政代執行
命令を無視し続けると、自治体が強制的に撤去や修繕を行います。かかった費用はすべて所有者に請求されます。
リスク③ 近隣トラブルと損害賠償
空き家を放置することで、以下のようなトラブルが発生する可能性があります:
- 外壁の崩落で通行人がケガをする
- 不審者の侵入や放火のリスク
- 雑草や害虫による近隣への迷惑
- 景観の悪化による地域の資産価値低下
これらが原因で損害が発生した場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。
空き家を相続したときの対処法6選
それでは、空き家を相続した場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
対処法① 相続から3年以内に売却する(最もおすすめ)
最もおすすめなのが、相続から3年以内に売却する方法です。
この期間内であれば、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」という税制優遇を受けられる可能性があります。
この特例を使うと、売却益から3,000万円を差し引いて税金を計算できるため、税負担を大幅に減らせます。
適用条件(主なもの):
- 1981年5月31日以前に建築された建物
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
- 売却価格が1億円以下
- その他、細かい要件あり
対処法② 賃貸物件として貸し出す
空き家を賃貸物件として活用すれば、家賃収入を得ることができます。
メリット:
- 毎月の家賃収入が得られる
- 建物が劣化しにくい
- 将来的に自分で住む選択肢も残せる
デメリット:
- リフォーム費用がかかる場合がある
- 入居者が見つからないリスク
- 入居者とのトラブル対応が必要
対処法③ 自分で住む
実家を自分の住まいとして利用する方法です。
メリット:
- 家族の思い出を残せる
- 住宅費が抑えられる
- 空き家リスクを回避できる
デメリット:
- 引っ越しの手間と費用
- リフォームが必要な場合がある
- 職場や学校との距離の問題
対処法④ 解体して土地を活用する
建物を解体し、更地にして活用する方法です。
活用例:
- 駐車場として貸し出す
- 売却する(更地の方が売れやすい場合も)
- 新しい建物を建てる
注意点:
- 解体費用がかかる(一般的に100〜200万円程度)
- 更地にすると固定資産税が高くなる
対処法⑤ 相続土地国庫帰属制度を利用する
2023年4月から始まった新しい制度です。
一定の条件を満たした土地を、国に引き渡すことができます。
対象外となる土地:
- 建物がある土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が不明確な土地
- その他、管理に支障がある土地
費用:
- 審査手数料:14,000円
- 負担金:原則20万円程度(宅地などは数十万円になる場合もあります)
対処法⑥ 相続放棄をする
相続が発生した後、「相続開始を知った日から3ヶ月以内」であれば、家庭裁判所で相続放棄をすることができます。ただし、相続放棄をしても、次の相続人が管理を開始するまでの間は、空き家の保存義務(民法940条)が残る可能性があります。
メリット:
- 空き家の管理責任から解放される
- 借金などマイナスの財産も引き継がない
デメリット:
- すべての財産を放棄することになる
- 空き家だけを選んで放棄することはできない
- 相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きが必要
必ずやるべきこと:相続登記の義務化
2024年4月から義務化スタート
2024年4月1日から、不動産の相続登記が法律で義務化されました。
義務の内容:
相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。
違反した場合:
正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なぜ相続登記が義務化されたのか?
相続登記がされないまま放置されると、以下のような問題が発生します:
- 所有者不明土地の増加
- 公共事業の妨げ
- 土地の有効活用の阻害
- 相続人の把握困難化
これらの問題を解決するため、法律が改正されました。
過去の相続も対象
重要なポイントは、2024年4月1日以前に発生した相続も対象ということです。
つまり、何年も前に相続した不動産でも、登記していない場合は、2027年3月31日までに登記する必要があります。
早めに専門家に相談することの重要性
空き家の相続問題は、放置すればするほど複雑化します。
専門家に相談するメリット
① 最適な対処法が見つかる
あなたの状況に合わせた、最も有利な方法を提案してもらえます。
② 税制優遇を最大限活用できる
3,000万円特別控除など、知らないと損する制度を活用できます。
③ 手続きがスムーズに進む
複雑な相続登記や売却手続きを、専門家がサポートします。
④ トラブルを未然に防げる
相続人間の争いや、近隣トラブルを回避できます。
相談すべき専門家
- 行政書士:相続手続き全般、遺産分割協議書の作成
- 司法書士:相続登記、不動産の名義変更
- 税理士:相続税の申告、税務相談
- 不動産会社:売却や賃貸の相談
- 弁護士:相続トラブル、訴訟対応
まとめ:空き家相続は「今すぐ」対策を
2025年問題により、相続件数は今後も増え続けます。
それに伴い、空き家問題もますます深刻化していくでしょう。
大切なのは、「いつか考えよう」ではなく、「今すぐ」動き始めることです。
空き家を放置すると、固定資産税が6倍になったり、50万円の過料が科されたり、行政代執行で多額の費用を請求されたりするリスクがあります。
一方で、相続から3年以内に売却すれば、3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
選択肢は意外と多く、早めに動けば、必ず最適な解決策が見つかります。
もしあなたが今、親の実家や空き家のことで少しでも不安を感じているなら、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。
私たち行政書士は、法律の専門家として、あなたとご家族に寄り添い、最適な解決策をご提案します。
一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
きっと、あなたに合った「安心の解決策」が見つかるはずです。
▼参考記事
2025年問題により大相続時代突入【今から考えておきたい相続と空き家】
https://www.minnano-komon.com/souzoku/2025problem/



