はじめに:遺言書に対する誤解とは?
「遺言書は一度書いたら安心」──多くの方がこのように考えていますが、実はこれは大きな誤解です。
毎日新聞の最新記事(2025年12月23日掲載)でも指摘されているように、遺言書は人生の節目や状況の変化に応じて、適切に更新していく必要がある「生きた文書」なのです。
この記事では、50代から70代の皆さんに向けて、遺言書の正しい活用方法と、相続トラブルを防ぐための「付言」の重要性について、行政書士の視点から詳しく解説します。
なぜ遺言書の更新が必要なのか?
人生には予期せぬ変化がたくさんある
私たちの人生は常に変化しています。特に50代から70代にかけては、以下のようなライフイベントが次々と訪れます。
- 不動産の購入や売却:新たにマンションを購入した、実家を売却したなど
- 家族構成の変化:子どもの結婚、孫の誕生、配偶者との離別や死別
- 相続人との関係性の変化:介護を通じて特定の子どもとの関係が深まった、逆に疎遠になった
- 財産状況の変化:退職金を受け取った、資産運用で財産が増減した
- 税制改正:相続税や贈与税のルールが変わった
こうした変化に対応しないまま遺言書を放置すると、内容が現実と大きく乖離してしまい、かえって相続トラブルの火種になってしまうのです。
古い遺言書が引き起こすトラブル事例
実際に、以下のようなケースは決して珍しくありません。
ケース1:すでに売却した不動産が記載されている
遺言書に「A不動産を長男に相続させる」と書かれていたが、実際にはそのA不動産はすでに売却済み。結果、長男は「自分が不利益を被った」と感じ、他の相続人との間でトラブルに。
ケース2:新たに取得した財産が記載されていない
遺言書作成後に購入したマンションについて記載がなかったため、その部分だけ遺産分割協議が必要になり、手続きが複雑化。
ケース3:家族関係の変化に対応していない
長年介護をしてくれた次男への配慮が遺言書に反映されておらず、他の兄弟と同じ配分だったため、次男が不満を抱き、家族関係が悪化。
「付言」とは何か?その驚くべき効果
付言の基本知識
「付言(ふげん)」とは、遺言書の最後に記載する、法的拘束力を持たない部分のことです。
具体的には、以下のような内容を記載します。
- 財産配分の理由
- 相続人への感謝の言葉
- 家族への最後のメッセージ
- 葬儀やお墓に関する希望
法的な効力はありませんが、この付言があるかないかで、相続人の気持ちや家族関係が大きく変わることがあります。
付言が相続トラブルを防ぐ理由
相続トラブルの多くは、「なぜ自分だけこの配分なのか?」という疑問や不満から始まります。
例えば、長男に自宅を相続させる場合、他の兄弟は「不公平だ」と感じるかもしれません。
しかし、付言に以下のように記載されていたらどうでしょうか?
「長男には自宅を相続させます。長男は私が病気で倒れてから、仕事を調整しながら毎日のように見舞いに来てくれました。介護も献身的にしてくれました。その感謝の気持ちを込めて、自宅を託します。他の子どもたちには金融資産を配分しますが、これは決して愛情の差ではありません。皆、それぞれに私を支えてくれました。どうか仲良く助け合って生きていってください。」
このように「理由」と「想い」が明確に記されていれば、他の相続人も納得しやすくなります。
付言に書くべき内容とは?
付言には、以下のような内容を盛り込むと効果的です。
- 財産配分の理由:なぜこのような配分にしたのか
- 感謝の言葉:相続人一人ひとりへの感謝
- 家族への願い:相続後も仲良くしてほしいという願い
- 特定の相続人への説明:不平等に見える配分の背景
- 葬儀や供養に関する希望:法的拘束力はないが、家族の指針になる
遺言書を更新すべきタイミングとは?
遺言書は「書いたら終わり」ではなく、定期的な見直しが必要です。以下のタイミングでは、必ず内容を確認しましょう。
1. 財産状況が大きく変わったとき
- 不動産を購入・売却した
- 退職金を受け取った
- 相続や贈与で財産を取得した
- 資産運用で財産が大きく増減した
2. 家族構成に変化があったとき
- 子どもが結婚した
- 孫が生まれた
- 配偶者が亡くなった
- 離婚や再婚をした
3. 相続人との関係性が変わったとき
- 特定の子どもが介護をしてくれるようになった
- 家族との関係が疎遠になった
- 相続人の経済状況が変化した
4. 税制改正があったとき
- 相続税や贈与税のルールが変わった
- 新しい制度や特例が創設された
5. 自分の健康状態が変化したとき
- 大きな病気をした
- 認知症の兆候が見られるようになった
遺言書の種類と選び方
遺言書には主に3つの種類があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったものを選びましょう。
自筆証書遺言
メリット:
- 費用がかからない
- 一人で作成できる
デメリット:
- 形式不備で無効になるリスク
- 紛失や改ざんの恐れ
- 家庭裁判所の検認が必要(保管制度利用時を除く)
公正証書遺言
メリット:
- 公証人が作成するため、形式不備のリスクがない
- 原本が公証役場に保管されるため安全
- 検認が不要
デメリット:
- 費用がかかる(数万円程度)
- 証人2名が必要
秘密証書遺言
メリット:
- 内容を秘密にできる
デメリット:
- 費用と手間がかかる
- 実務ではほとんど利用されない
どれを選ぶべき?
初めて遺言書を作る方:まずは自筆証書遺言で作成し、法務局の保管制度を利用するのがおすすめ
確実性を重視する方:公正証書遺言が最も安全で確実
財産が複雑な方:専門家に相談して公正証書遺言を作成
行政書士に相談するメリット
遺言書の作成や更新について、「自分でできる」と思っている方も多いでしょう。
しかし、専門家である行政書士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
1. 法的に有効な遺言書を作成できる
形式不備で遺言書が無効になるリスクを回避できます。
2. 相続税対策のアドバイスがもらえる
税理士と連携して、相続税を抑える工夫を提案します。
3. 家族の状況に応じた最適な内容を提案
画一的ではなく、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの遺言書を作成します。
4. 付言の書き方をサポート
想いを言葉にするのは意外と難しいもの。専門家のサポートで、適切な付言を作成できます。
5. 定期的な見直しをサポート
人生の節目ごとに、内容の見直しをサポートします。
まとめ:今こそ遺言書を見直しましょう
遺言書は「書いて終わり」ではありません。
人生の節目ごとに内容を見直し、常に最新の状態に保つことが大切です。
そして、「付言」を活用することで、相続トラブルを未然に防ぎ、ご家族の絆を守ることができます。
50代、60代、70代の皆さん。
「まだ早い」と思っているうちに、時は過ぎていきます。
大切なご家族のために、今できることから始めましょう。
遺言書の作成や見直しについて、少しでも不安があれば、ぜひ行政書士にご相談ください。
あなたの想いを形にし、ご家族の未来を守るお手伝いをさせていただきます。
参考記事
毎日新聞「遺言書の活用方法と注意点 財産配分の理由『付言』を」
https://mainichi.jp/articles/20251223/ddm/012/040/082000c
関連キーワード:遺言書 更新、遺言書 見直し、付言 書き方、相続トラブル 防止、遺言書 種類、自筆証書遺言、公正証書遺言、行政書士 相続、終活 50代、終活 60代、終活 70代、遺言書 作成方法、相続対策、エンディングノート



