はじめに:増え続ける「墓じまい」の相談
「先生、実家のお墓、どうしたらいいんでしょうか…」
お墓の問題は、50代から70代の方にとって、避けて通れない終活の重要テーマです。
少子高齢化が進む現代、お墓を継ぐ人がいない、遠方で管理できない、子どもに負担をかけたくない──そんな理由から「墓じまい」を選択する方が急増しています。
この記事では、墓じまいにかかる費用、具体的な手続きの流れ、そして新しい時代の供養の在り方について、行政書士の視点から詳しく解説いたします。
そもそも「墓じまい」とは?基礎知識を押さえよう
墓じまいの定義
「墓じまい」とは、先祖代々受け継いできたお墓を撤去し、遺骨を別の場所に移すことを指します。正式には「改葬(かいそう)」と呼ばれる手続きです。
墓石を撤去して更地に戻し、墓地の使用権を返還します。その後、遺骨は永代供養墓や樹木葬、納骨堂などに移すのが一般的です。
なぜ今、墓じまいが必要なのか
現代日本では、次のような社会的背景から墓じまいのニーズが高まっています:
1. 少子高齢化による跡継ぎ不在
子どもがいない、あるいは一人っ子で遠方に住んでいるなど、お墓を継ぐ人がいないケースが増えています。
2. 核家族化と地方の過疎化
実家を離れ都市部で暮らす人が多く、地方のお墓を定期的に管理することが困難になっています。
3. 経済的負担の問題
年間の管理費や修繕費が家計を圧迫するケースもあります。
4. 価値観の多様化
従来の「家墓」という概念にとらわれず、新しい供養の形を求める人が増えています。
墓じまいにかかる費用は?相場を詳しく解説
墓じまいには、いくつかの段階で費用が発生します。全体としては30万円から100万円程度が相場です。
1. 墓石撤去・処分費用:10万円〜50万円
墓石の大きさや立地条件により変動します。
- 小さな墓石:10万円〜20万円
- 標準的な墓石:20万円〜30万円
- 大きな墓石・特殊な立地:30万円〜50万円以上
山の中腹など、重機が入れない場所では、人力作業が必要となり費用が高額になります。
2. 離檀料(りだんりょう):3万円〜20万円
お寺の檀家を離れる際に支払うお布施です。法的な義務ではありませんが、長年お世話になった感謝の気持ちとして渡すのが一般的です。
金額は、お寺との関係性や地域の慣習により大きく異なります。事前にお寺に相談し、適正な金額を確認しましょう。
3. 閉眼供養(魂抜き)のお布施:3万円〜10万円
墓石から魂を抜く儀式である「閉眼供養」を行う際のお布施です。
4. 遺骨の新しい納骨先費用:10万円〜80万円
- 永代供養墓:10万円〜50万円
寺院や霊園が永代にわたって供養・管理してくれます。 - 樹木葬:20万円〜80万円
墓石の代わりに樹木を植え、自然に還る形の供養です。 - 納骨堂:30万円〜100万円
屋内施設で、都市部に多く、アクセスが便利です。 - 散骨:5万円〜30万円
海や山に遺骨を撒く方法。法律上、粉末化する必要があります。
5. 行政手続き費用:数千円程度
改葬許可証の取得など、役所での手続きに必要な書類代です。
費用を抑えるポイント
- 複数の石材店から見積もりを取る
- 自治体の補助金制度を確認する
- 遺骨の一部のみを移す「分骨」も検討する
墓じまいの手続きを7ステップで解説
墓じまいは、適切な順序で進めることが重要です。以下、具体的な手順を説明します。
ステップ1:家族・親族との話し合い
最も重要なのが、親族間での合意形成です。独断で進めると、後々大きなトラブルになりかねません。
話し合いのポイント:
- なぜ墓じまいが必要なのか、理由を丁寧に説明する
- 遺骨の新しい納骨先を提案する
- 費用負担について話し合う
- 反対意見にも耳を傾ける
ステップ2:お寺や霊園への相談
現在お墓がある寺院や霊園に、墓じまいの意向を伝えます。離檀の手続きや費用について確認しましょう。
ステップ3:新しい納骨先を決定
遺骨をどこに納めるか決めます。見学や資料請求を行い、じっくり検討しましょう。
ステップ4:改葬許可証の取得
市区町村役場で「改葬許可証」を取得します。
必要書類:
- 改葬許可申請書(役所で入手)
- 埋葬証明書(現在の墓地管理者が発行)
- 受入証明書(新しい納骨先が発行)
- 申請者の本人確認書類
自治体によって手続きが異なるため、事前に確認しましょう。
ステップ5:閉眼供養の実施
墓石から魂を抜く「閉眼供養」を僧侶に依頼します。
ステップ6:墓石の撤去と遺骨の取り出し
石材店に墓石の撤去を依頼し、遺骨を取り出します。
ステップ7:新しい納骨先へ納骨
改葬許可証を提出し、新しい場所に納骨します。必要に応じて開眼供養を行います。
墓じまいでよくあるトラブルと対策
トラブル1:親族間の意見対立
対策:
早めに話し合いの場を設け、全員の意見を聞く。専門家(行政書士など)を交えた話し合いも有効です。
トラブル2:高額な離檀料の請求
対策:
法外な金額を請求された場合は、弁護士や行政書士に相談しましょう。離檀料に法的義務はありません。
トラブル3:手続きの不備
対策:
改葬許可証の取得には複数の書類が必要です。役所や専門家に確認しながら進めましょう。
トラブル4:勝手に墓じまいを進めてしまった
対策:
必ず事前に親族全員の同意を得ることが大切です。
新しい時代の供養スタイルを知ろう
墓じまい後の選択肢は、従来の「家墓」だけではありません。
永代供養墓
寺院や霊園が永代にわたって供養・管理してくれる墓です。跡継ぎがいなくても安心です。
樹木葬
墓石の代わりに樹木を植え、自然に還る形の供養。環境に優しく、費用も比較的抑えられます。
納骨堂
屋内の施設に遺骨を納める方法。都市部に多く、天候に左右されずお参りできます。
散骨
海や山に遺骨を撒く方法。ただし、遺骨は2mm以下に粉末化する必要があります。
手元供養
自宅で遺骨を保管する方法。小さな骨壺やアクセサリーに納めることもできます。
遺言書で「祭祀承継者」を指定できる
お墓を誰が継ぐかは、遺言書で指定することができます。これを「祭祀承継者の指定」といいます。
遺言書に記載することで、親族間のトラブルを未然に防ぎ、希望する人にお墓を引き継いでもらえます。
エンディングノートに墓じまいの希望を記す
エンディングノートに、墓じまいについての希望を書いておくことも有効です。
- 墓じまいをしてほしいか
- 遺骨をどこに納めてほしいか
- 供養の方法についての希望
これらを記しておくことで、残された家族が迷わずに済みます。
行政書士ができるサポート
墓じまいに関して、行政書士は以下のようなサポートができます:
- 改葬許可申請書の作成・提出代行
- 親族間の話し合いの場のコーディネート
- 遺言書作成における祭祀承継者の指定
- エンディングノート作成のアドバイス
- 各種手続きの総合サポート
一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:墓じまいは「前向きな選択」
墓じまいは、決して先祖を軽んじる行為ではありません。
時代に合った形で供養を継続し、次の世代に過度な負担をかけない、責任ある選択です。
大切なのは、「形式」ではなく「心」です。どんな形であれ、先祖を想う気持ちがあれば、それが最良の供養といえるでしょう。
元気なうちに、家族でじっくり話し合い、自分たちに合った供養の形を見つけてください。
何かお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。あなたとご家族にとって最適な解決策を、一緒に考えましょう。


